記事: テストステロンと亜鉛|不足するとどうなるか、研究で分かっていること

テストステロンと亜鉛|不足するとどうなるか、研究で分かっていること
亜鉛は、男性ホルモンであるテストステロンを含め、体内のさまざまな機能に関与する必須ミネラルです。研究では、亜鉛が不足した状態とテストステロン値との関連が報告されています。
ただし、ここで重要なのが「亜鉛が不足している人」と「すでに足りている人」を分けて考えることです。亜鉛が不足している人への補給と、充足している人への上乗せは同じではありません。
この記事では、亜鉛とテストステロンについて研究で分かっていること、日本人男性の摂取量、食品から摂る方法、サプリメントを利用する場合の上限まで解説します。
本記事でわかること
- 亜鉛とテストステロンにはどのような関係があるのか
- 亜鉛が不足している人と足りている人で研究結果がどう違うのか
- 日本人男性の亜鉛摂取量と推奨量
- 亜鉛を多く含む食品と日常での摂り方
- サプリメントを利用するときの上限量と注意点
①亜鉛とテストステロンの関係
亜鉛は人の体内で合成できない必須ミネラルです。食事などから継続的に摂取する必要があります。
体内では数多くの酵素の働きに関わるほか、たんぱく質やDNAの合成、細胞のシグナル伝達や分裂などにも関与しています。
男性の生殖機能との関係も研究されており、テストステロンとの関連が注目される理由のひとつです。
重要なのは、「亜鉛を摂取すれば、その量に比例してテストステロンが増える」という関係ではないことです。
亜鉛とテストステロンの研究を見るときは、対象者がもともと亜鉛不足だったのか、それとも十分に摂取できていたのかを確認する必要があります。
実際、亜鉛不足の状態を作った研究ではテストステロン値の低下が報告されています。一方、亜鉛を十分に摂取していた男性に追加で補給した研究では、テストステロンの有意な変化が確認されなかった例もあります。
つまり、亜鉛は「多く摂るほどよい」と考えるのではなく、不足させないことを第一に考えるのがポイントです。
フェヌグリークやトンカットアリなど、ほかの成分についてはテストステロンブースターの成分と配合量の見方で詳しく解説しています。
②亜鉛とテストステロンについて研究で報告されていること
亜鉛とテストステロンの関係を考えるうえで、よく引用されるのがPrasadらの1996年の研究です。
この研究では、20〜80歳の健康な男性40名を対象とした横断的な調査に加えて、若年男性への亜鉛制限と、亜鉛が不足気味だった高齢男性への亜鉛補給が検討されています。
この研究を「亜鉛を摂ればテストステロンが増える」と単純化しないことが重要です。
「不足している人」と「足りている人」を分けて研究結果を見る必要があります。
亜鉛が不足している人・不足させた人
Prasadらは、健康な若年男性4名を対象に食事からの亜鉛を制限しました。
20週間後、血清テストステロン値は平均39.9nmol/Lから10.6nmol/Lへ低下したと報告されています。
さらに、もともと境界域の亜鉛不足だった高齢男性9名には、グルコン酸亜鉛として459μmol/日の亜鉛を3〜6か月補給しました。
6か月時点の血清テストステロン値は、平均8.3nmol/Lから16.0nmol/Lへ変化したと報告されています。
ただし、若年男性4名、高齢男性9名という非常に小規模な検討です。大規模なランダム化比較試験ではありません。
この結果だけから、一般の男性全体に同じ変化が起こるとは判断できません。
すでに亜鉛が足りている人
一方、亜鉛を十分に摂取している人では異なる結果も報告されています。
Koehlerらは、日常的な亜鉛摂取量が11.9〜23.2mg/日だった、定期的に運動する22〜33歳の健康な男性14名を対象に試験を実施しました。
亜鉛を含むサプリメントの摂取によって血清亜鉛濃度は上昇しましたが、総テストステロンと遊離テストステロンには有意な変化が確認されませんでした。
亜鉛不足を補う場合と、充足している状態からさらに追加する場合は分けて考える必要があります。
代表的な研究の比較
| 研究 | 対象者 | 人数 | 期間 | 亜鉛摂取・介入 | 報告された内容 |
|---|---|---|---|---|---|
| Prasadら 1996 | 健康な若年男性 | 4名 | 20週間 | 食事中の亜鉛を制限 | 血清テストステロンの低下を報告 |
| Prasadら 1996 | 境界域の亜鉛不足がある高齢男性 | 9名 | 3〜6か月 | グルコン酸亜鉛として459μmol/日 | 6か月後の血清テストステロン上昇を報告 |
| Koehlerら 2009 | 亜鉛を十分摂取していた運動習慣のある健康男性 | 14名 | 研究期間中に亜鉛含有サプリメントを使用 | ベースライン亜鉛摂取量11.9〜23.2mg/日 | 総・遊離テストステロンに有意な変化なし |
この領域には小規模研究が多くあります。
そのため、「亜鉛=テストステロンを増やす成分」と考えるより、まず自分の食生活で不足していないかを考えるほうが、研究結果に沿った見方です。
③日本人男性は亜鉛をどれくらい摂っている?
では、日本人男性は実際にどのくらい亜鉛を摂取しているのでしょうか。
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、成人男性の亜鉛推奨量は次のように設定されています。
| 年齢 | 男性の推奨量 |
|---|---|
| 18〜29歳 | 9.0mg/日 |
| 30〜49歳 | 9.5mg/日 |
| 50〜64歳 | 9.5mg/日 |
| 65〜74歳 | 9.0mg/日 |
| 75歳以上 | 9.0mg/日 |
一方、厚生労働省「令和6年国民健康・栄養調査報告」における男性の1日平均亜鉛摂取量は、20〜29歳で9.8mg、30〜39歳で9.7mg、40〜49歳で8.9mg、50〜59歳で9.2mgでした。
30〜50代男性の平均摂取量と推奨量
| 年齢 | 亜鉛の平均摂取量 | 食事摂取基準の推奨量 |
|---|---|---|
| 30〜39歳 | 9.7mg/日 | 9.5mg/日 |
| 40〜49歳 | 8.9mg/日 | 9.5mg/日 |
| 50〜59歳 | 9.2mg/日 | 9.5mg/日※ |
※食事摂取基準は50〜64歳区分。
平均値だけで「亜鉛不足」と判断しない
「平均摂取量が推奨量より低い=その年代の男性全員が亜鉛不足」という意味ではありません。
国民健康・栄養調査は集団の平均値です。個人の亜鉛状態を直接判定する検査ではありません。
ただ、40〜50代男性の平均摂取量が推奨量をやや下回る年代があることは、食生活を確認するひとつの材料になります。
肉類、魚介類、卵、乳製品などをあまり食べない方や、極端な食事制限をしている方は、普段の食事内容を一度確認してみるとよいでしょう。
④亜鉛が不足するとどうなる?
亜鉛は全身のさまざまな機能に関わっているため、不足した場合の症状もひとつではありません。
日本臨床栄養学会「亜鉛欠乏症の診療指針2024」では、亜鉛欠乏症でみられる臨床症状・所見として、皮膚炎、口内炎、脱毛、食欲低下、味覚障害などが挙げられています。
亜鉛欠乏症でみられることがある症状・所見
- 味覚障害
- 皮膚炎・口内炎
- 脱毛
- 食欲低下
性腺機能不全や不妊症なども診断基準に含まれています。
一方、「最近疲れやすい」「爪の状態が気になる」といったひとつの症状だけで、亜鉛不足と判断することはできません。
似た症状は、ほかの栄養状態や疾患などでも生じる可能性があるためです。
症状だけで自己判断しないことが重要です
亜鉛不足が疑われる症状があっても、「テストステロンも低下している」と自己判断することは避けましょう。
亜鉛欠乏症の診療指針では、症状だけではなく、ほかの原因の除外や血清亜鉛値などを含めて診断します。
亜鉛不足が心配な場合は、サプリメントを大量に摂取して様子を見るのではなく、医療機関へ相談することが適切です。
⑤亜鉛を多く含む食品
亜鉛はサプリメントだけでなく、日常の食品から摂取できます。
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」によると、代表的な食品の亜鉛含有量は次のとおりです。
| 食品 | 亜鉛量(可食部100gあたり) |
|---|---|
| かき・養殖・生 | 14.0mg |
| 和牛もも赤肉・生 | 4.5mg |
| プロセスチーズ | 3.2mg |
| 糸引き納豆 | 1.9mg |
牡蠣は亜鉛を多く含みますが、毎日牡蠣を食べる必要はありません。
日常的には、肉類や魚介類、大豆製品、乳製品などを組み合わせるほうが現実的です。
現実的なのは「1つの食品で全部摂る」のではなく、1日の食事で複数の食品を組み合わせることです。
たとえば昼食で牛肉を使った料理を選び、朝食や夕食に納豆やチーズを組み合わせる方法があります。
「亜鉛を摂るために特定の食品だけを大量に食べる」のではなく、普段の食事全体で考えることがポイントです。
⑥亜鉛をサプリメントで摂る場合の上限と注意点
食事だけでは不足が気になる場合、亜鉛サプリメントを選択肢として考える方もいるでしょう。
ここで特に注意したいのが、「多ければ多いほどよいわけではない」という点です。
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、男性の亜鉛の耐容上限量を次のように設定しています。
| 年齢 | 男性の耐容上限量 |
|---|---|
| 18〜29歳 | 40mg/日 |
| 30〜49歳 | 45mg/日 |
| 50〜64歳 | 45mg/日 |
| 65〜74歳 | 45mg/日 |
| 75歳以上 | 40mg/日 |
耐容上限量=目標摂取量ではありません
耐容上限量とは、健康障害を生じるリスクがないとみなされる習慣的な摂取量の上限です。上限まで摂取することを推奨する数値ではありません。
サプリメントを利用するときは、商品に書かれた亜鉛量だけを見るのではなく、食事やほかのサプリメントも含めて考える必要があります。
たとえば、亜鉛単体のサプリメントに加えて、マルチビタミン・ミネラルにも亜鉛が入っていれば、知らないうちに摂取量が重複します。
高用量の亜鉛と銅の関係
亜鉛の高用量摂取を長期間続けると、銅の吸収を妨げる可能性があります。
NIH Office of Dietary Supplementsでは、50mg以上の亜鉛を数週間摂取することで、銅の吸収を阻害する可能性が示されています。
亜鉛サプリを選ぶときに確認したいこと
- 1日あたりの亜鉛配合量
- マルチビタミンなど他のサプリにも亜鉛が入っていないか
- 食事を含めた総摂取量が過剰になっていないか
- 含有量の多さだけで商品を判断していないか
また、亜鉛は一部の抗菌薬などと相互作用する可能性があります。
薬を服用している方、治療中の疾患がある方は、使用前に医師または薬剤師へ相談してください。
⑦グルコン酸亜鉛・ピコリン酸亜鉛・酸化亜鉛は何が違う?
亜鉛サプリメントを見ると、「グルコン酸亜鉛」「ピコリン酸亜鉛」「酸化亜鉛」など、異なる名称が表示されています。
これは亜鉛が何と結合した形で配合されているかの違いです。
亜鉛の形態によって吸収率が異なる可能性は、ヒトを対象とした研究でも検討されています。
たとえば、健康な成人15名を対象とした2014年のクロスオーバー試験では、クエン酸亜鉛とグルコン酸亜鉛の吸収率は近く、酸化亜鉛はそれらより低かったと報告されています。
また、健康な男性12名を対象とした別の試験でも、グルコン酸亜鉛と酸化亜鉛で血中濃度の推移に差が報告されています。
ピコリン酸亜鉛についても吸収を比較した小規模研究があります。
「どの形態が一番よい」と形態だけで決める必要はありません。
研究は対象者数や条件が限られており、一律に優劣を決められるほど単純ではありません。
サプリメントを選ぶ際は、形態だけでなく「元素としての亜鉛を1日何mg摂取できるのか」まで確認しましょう。
⑧よくある質問
ここからは、テストステロンと亜鉛についてよくある質問に回答します。
Q1. 亜鉛を摂ればテストステロンは増えますか?
条件によります。
亜鉛不足の男性や、食事中の亜鉛を制限した男性を対象とした研究では、テストステロン値との関連が報告されています。
一方、すでに亜鉛を十分に摂取していた健康な男性では、追加摂取による有意な変化が確認されなかった研究もあります。
「亜鉛を多く摂れば、その分テストステロンが増える」と考えないことが重要です。
Q2. 亜鉛は1日にどれくらい摂ればいいですか?
日本人の食事摂取基準(2025年版)では、30〜64歳男性の推奨量は1日9.5mgです。
一方、耐容上限量は30〜64歳男性で1日45mgです。
推奨量と耐容上限量は意味が異なります。上限量まで摂取することを推奨しているわけではありません。
Q3. 亜鉛のサプリはいつ飲むのがいいですか?
食品として摂取するサプリメントでは、医薬品のように特定の時刻が決められているものではありません。
まずは商品に記載された摂取目安量と方法に従ってください。
空腹時に摂取して胃の不快感などがある場合は、使用を中止するか、摂取方法について医師・薬剤師などへ相談してください。
Q4. ビタミンDと一緒に摂っても大丈夫ですか?
亜鉛とビタミンDは異なる栄養素です。複数の栄養素を含むサプリメントもあります。
ただし、併用する場合は、それぞれの製品から摂取する栄養素の総量を確認することが重要です。
Q5. 亜鉛を摂りすぎるとどうなりますか?
高用量の亜鉛を継続的に摂取すると、銅の吸収に影響する可能性があります。
吐き気、胃の不快感などがみられることもあります。
亜鉛単体のサプリだけでなく、マルチビタミン・ミネラルなどに含まれる亜鉛との重複にも注意してください。
まとめ
- 亜鉛とテストステロンには関連が報告されている
- 研究を見るときは「亜鉛不足」と「すでに足りている状態」を分ける
- 30〜64歳男性の亜鉛推奨量は1日9.5mg
- 30〜64歳男性の耐容上限量は1日45mg
- サプリメントでは配合量と他製品との重複を確認する
亜鉛は「多ければ多いほどよい」栄養素ではありません。
まずは普段の食生活を確認し、不足させないことを基本に考えましょう。亜鉛不足が心配な場合は、症状だけで自己判断せず、必要に応じて医療機関へ相談してください。
最終更新日(2026.9.8)
参考文献・資料(10件)
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※本記事は健康・栄養に関する一般的な情報提供を目的としたもので、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。持病のある方、服薬中の方、体調に不安のある方は、サプリメントを使用する前に医師または薬剤師へご相談ください。
